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南海沿線にある漁港および周辺地域の魅力を伝えるウェブマガジン

ヨットのプロフェッショナルが見た
田尻漁港 (後編)

2015.09.16

最寄り駅:南海本線 吉見ノ里駅

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(→前編はこちら)

2005年、全国の漁港で初めて「海の駅」に認定された田尻漁港。そして漁協から業務委託を受けてマリーナの運営管理を行っているのが、青木ヨット株式会社の青木洋さんである。
前編では、青木さんが世界一周の大航海を単独ヨットで成し遂げた青年時代の話や、青木さんと田尻漁港との出会いについてご紹介した。

開かれた港として全国から注目を集めるようになった田尻漁港で、現在、青木さんが力を注いでる活動とは?田尻漁港の未来についてはどんな思いを抱いておられるのだろう?

全国から生徒が通う青木ヨット

青木さんは、田尻マリーナの運営管理のほかに、ヨットスクール、ボートスクールも運営している。

ヨットスクールは日本で唯一のアメリカセーリング協会の認定校で、精神力を鍛えるのではなく、しっかりと技術を教えることがモットー。特別な体力がなくても気軽に学ぶことができるため、第二の人生をヨットで楽しみたいと、多くの50代〜60代の方もレッスンに訪れている。しかも北海道から沖縄まで、全国から生徒さんが集まっており、これまでのスクール卒業生は実に2,900人を超えるというから驚きを隠せない。

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 “卒業生の中には太平洋を横断してサンフランシスコまで行った人もいますよ。そんな航海話を聞くことが何よりの楽しみですね。”

先生と生徒といえども同じヨットを愛する仲間同士。生徒さんが話す海上でのさまざまな体験談に、青木さんが目を細めて聞き入る姿がこちらにも伝わってくる。

ボート免許、船舶免許の教習を行うボートスクールは国土交通省の認可教習場となっている。試験も、学科・実技ともにスクール内で受けることができ、青木さんのもとで船舶免許を取得する漁師さんも多い。

 “田尻漁港の漁師さんも、たくさんここで免許を取っておられます。だから「日曜朝市」に買い物に出かけるとよくオマケをしてもらったりね。それがまたうれしいんですよ。”

楽しそうに話してくれる、青木さんの屈託のない笑顔や優しい物腰が、多くの人の心を惹きつけて止まないのだろう。

田尻漁港の魅力をもっと広めたい

全国の多くの漁港が、これからの漁業のあり方について考える時期を迎えている。漁師さんの高齢化、漁獲高や収入の減少、地方の過疎化など、取り組むべき問題は地域によってさまざまだと思うが、未来を見据え、策を講じていくことが求められているのはどこの漁港も同じだろう。

そんな中、田尻漁港のいまの姿は青木さんの目にどんな風に映っているのだろうか。また、これからの田尻漁港のあり方について、どんな思いを持っているのだろうか。

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“古い人に話を聞くと、昔、田尻漁港は本当に小さな漁港だったそうです。それが関空ができてからは状況が変わってきてね。今では立派な漁港になり、若い漁師さんも増えて、本当に随分若返りました。だから私はこれからが楽しみだと思っているんです”

青木さんは明るい表情で話を続ける。

“田尻漁港は「海の駅」に登録されて、それまで以上に利用しやすくなりました。ここには釣り堀もあるし、「日曜朝市」や「体験漁業」といったユニークな取り組みも行っている。誰でも気軽に立ち寄れて、いろんな事が楽しめる港だということを、もっと多くの人に知ってもらいたいですね。”

おおらかで希望に満ちた青木さんの言葉からは、若き頃、ただ一人で世界の大海原へと向かった冒険家ならではの力強さを感じずにはいられない。

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これからもヨット一筋に

マリーナもまた、田尻漁港の魅力を発信するため、これからさらに重要なコンテンツとなっていくだろう。

 “ここで多くの人に気軽にヨットを楽しんでもらうことで、ヨットが欧米の国々のようにどんどん普及していけばいいですね。そうすると、海からも田尻を訪れる人が増えてくれますから。”

青木さんの事務所には、ヨットや海に関する専門書が置かれた図書室があり、誰もが自由に閲覧できるように開放されている。また、船上でのさまざまな紐の結び方を紹介した額や、風とヨットの進路との関係が分かる図表など、どれも見ていて飽きることがない。

ヨットのことをまったく知らない素人相手に、そんなひとつひとつを手に取りながら、うれしそうに説明をしてくれる青木さん。ヨットの話をしだすともう止まらないのだ。

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 “ヨットほど素晴らしいものはないですよ。風の力は原始的なものだから、こちらも原始人のように自分の感じたままに動かなくてはいけない。今の世の中はあれこれ考えてストレスが溜まることも多いと思いますが、ヨットの上はまったく違う世界ですよ。”

きれいに澄んだ目でそう語る青木さんは、まさに永遠のヨット少年なのである。

 

<全力で漁に身…田尻漁港の記事泉佐野発 伝説…

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AOKIヨットスクール

大阪府泉南郡田尻町りんくうポート北1番地
最寄り駅:南海本線 吉見ノ里駅より徒歩約10分
[営業時間]9:00〜18:00 [定休日]ともに火曜日・水曜日(祝日を除く)
TEL : 072-465-8192
URL:http://www.aokiyacht.com


青木ボートスクール株式会社

大阪府泉南郡田尻町りんくうポート北1番地
最寄り駅:南海本線 吉見ノ里駅より徒歩約10分
[営業時間]9:00〜18:00 [定休日]火曜日・水曜日(祝日を除く)
TEL : 072-425-3849
URL:http://www.aokischool.com