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南海沿線にある漁港および周辺地域の魅力を伝えるウェブマガジン

ヨットのプロフェッショナルが見た
田尻漁港(前編)

2015.08.31

最寄り駅:南海本線 吉見ノ里駅

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田尻漁港のシンボルともいえるスカイブリッジは、全長338.1メートル、高さ110メートルと国内でも有数の大きさを誇る斜張橋だ。田尻漁港を跨ぐかたちで陸路の利便性を図るために建設されたものだが、その美しいフォルムを持つ橋は、日本のみならず世界中の外洋から訪れるヨットが入港する際の目印としても活躍している。

田尻漁港はマリーナも共存する珍しい漁港で、2005年には「海の駅(たじり海の駅)」に登録された。

「海の駅」とは国土交通省がマリンレジャー推進のために取り組んでいるプロジェクトで、海上からだけではなく、地上からも気軽に利用でき、地域振興の拠点にもなる場所であることが定められている。田尻漁港はさまざまな条件審査をクリアして、全国の漁港として初めて「海の駅」に認定された。

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そして田尻漁協から業務委託を受け、田尻マリーナの運営管理を行っているのが、青木ヨット株式会社の青木洋(あおき よう)さん。「海の駅」の認定取得にも尽力した立役者である。

小さな手作りヨットで成し遂げた大航海

青木さんは日本人として初めて、自作ヨットでの単独世界一周に成功した人物。航海に使われた全長6.4メートルのヨットもまた、世界一周の航海を果たした自作最小艇としてギネスブックに登録されている。

わずか6.4メートルのヨットで世界一周を目指すとはあまりにも大胆だ。しかも当時、青木さんは20代前半。その若さで成し遂げてしまったというのだから仰天してしまう。

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 “高校時代、進学校で落ちこぼれてしまってね。学校をさぼって海を眺めていたら、目の前をヨットが走って行くのが見えたんです。それで急にヨットに興味が湧いてきてね。帰り道に本屋さんに駆け込んで「ヨット工作本」という本を買って、学校の授業中もずっと読んでいましたよ。”

青木さんは懐かしそうに少年時代を振り返りながら、そんな事を話してくれた。

そして高校3年生の時には自作第1号となるヨットを完成。大学へは進学せず、堺市のヨット製作会社で本格的な知識を学びながら、世界一周をめざしてヨット作りに没頭したそうだ。

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さらに2年がかりでヨット「信天翁(あほうどり)二世号」を完成。約1年間帆走テストを続け、青木さんは22歳の時にまだ見ぬ外洋に向けて堺市の石津港を出航した。およそ3年間の月日をかけることになった世界一周へのチャレンジは、青木さんが今もなお情熱を注いでやまないヨット人生への船出でもあったのだろう。

田尻漁港の開放的な雰囲気に魅了されて

ヨット会社を経営する青木さんが、田尻漁協からマリーナの運営管理を受託したのは1995年のこと。きっかけは、青木さんが田尻漁港の「日曜朝市」に買い物に来た際に、ひと目で港の雰囲気に惚れこんでしまったことだったそうだ。

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 “漁港って、雑然とした雰囲気のところが多いでしょ。それに関係者以外は立ち入れないような閉鎖的なイメージもある。
でも、田尻漁港はとてもきれいで開放的で、他の漁港とはちょっと違っていたんです。”

そこで青木さんは漁業組合に出向き、「港でマリーナを運営できないだろうか」と直談判に打って出たという。海で仕事をするための漁港と、海で遊ぶためのマリーナはお互いに相容れない面がある。漁師さんもまたヨット愛好家を理解してくれる懐の広さがないと、漁港でのマリーナ運営は難しいのではないだろうか。

 “田尻はそれを受け容れてくれる漁港だったんです。漁協長に話を伺うと、田尻漁港では朝市で一般の方に魚を販売したりもするので、サービス業の考え方も少しずつ漁師さんに浸透してきているということでね。それで、ぜひマリーナをやりましょう、ということになったんです。

私が期待していたとおり、漁師さんたちはマリーナを好意的に迎えてくれました。今でも、ヨットが港に着いた時にはロープを取ってくれたり、沖からヨットが帰れなくなった時には漁船で牽引してくれたり、いろいろお世話になっています。他の漁港だったら、まずこんなことはしてくれないでしょうね。”

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開港から20年を迎え、現在マリーナには80艇ものヨットが係留している。さらにはマリーナを訪れるビジターヨットも後を絶たない。田尻漁港は漁港とマリーナがまさに理想的な共存を果たし、いつしか全国から大きな注目を集めるほどに成長を遂げたのである。

(→後編に続く)

<田尻漁港の『…田尻漁港の記事漁港内の人気…>

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