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南海沿線にある漁港および周辺地域の魅力を伝えるウェブマガジン

佐野漁港「青空市場」の
賑わいを楽しむ

2015.08.31

最寄り駅:南海本線 泉佐野駅

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平成6年。関西国際空港の開港をきっかけに、大型アウトレットモールやアミューズメント施設がぞくぞくと誕生し、静かな海辺の町からファミリー層に人気の観光エリアへと様変わりした泉佐野市。

それらさまざまなレジャー施設のほど近く。南海本線「泉佐野駅」からも歩いて行くことのできる佐野漁港に、隠れた人気の場所があるのをご存知だろうか。

そこは「泉佐野漁協青空市場」。鮮魚店を中心におよそ30の店舗が軒を並べ、ひとたび中に入るとまるでタイムトリップをしたかのような、昔ながらの風景に出会える市場だ。販売されている魚のおいしさにも定評があり、プロの料理人が仕入れに通うことはもちろん、週末には他府県からも多くの人が訪れ賑わいを見せている。

50年以上の歴史を持つ「青空市場」

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「青空市場」の始まりは昭和30年代後半のこと。浜の漁師や仲買業者が、文字通り、漁港横の屋根もない道端で自然発生的に魚介類の販売を行ったことから誕生した。

大型のスーパーマーケットもなかった当時のこと。近くの住民がこぞって買い物に訪れ、道には人があふれていたという。

今と比べて獲れる魚の量が格段に多いうえ、皆が大家族で暮らしていた当時。市場では、小魚やシャコなどの魚介がトロ箱ごとの単位で、しかも破格の「浜値」で売られていたそうだ。道のあちらこちらではトロ箱から逃げ出したタコやアナゴが元気よく動いていて、「市場の周りを歩くだけでその日のおかずにありつける」と人々が冗談まじりに話すほどだったというから、なんとも開放的な雰囲気だったに違いない。

そしておよそ20年前、「青空市場」は佐野漁港の埋立てによる移動に伴って現在の場所に移転。雨の日や寒い日でもゆっくりと買い物が楽しめる屋内施設として再スタートしたのである。

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鮮魚店がずらりと並ぶ市場の風景

現在の「青空市場」は泉佐野漁協と直結しており、レストランのある2階のウッドデッキからは、多くの漁船が行き来する佐野漁港の湾内をぐるりと見渡すことができる。1階にはおよそ30の店舗が通路の両側にずらりと並び、その大半が鮮魚店だ。

泉佐野の地魚をメインに扱う店、アワビなどの貝類に特化した店、ハモやフグなど鍋物素材を扱う店、シラス専門店など、それぞれが特色を出しながら営業しているので、思わずひとつひとつのお店をじっくりと覗き込んでしまう。

魚のほとんどは切身ではなく、そのままの姿でずらりと店頭に並べられていて、コチやスズキ、シャコ、ワタリガニなど、大阪市内のスーパーなどではあまり見かけることのない魚介も多い。

和食店のみならず、イタリアンやフレンチなどプロの料理人たちが、この市場に足しげく通うというのも、うなずけてしまう話である。

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ほかにも、獲れたての魚を天ぷらにして販売する店、水なすなど泉州産の青果を扱う店、果物店、花屋、さらには堺打刃物の専門店まであり、市場内を回っていると、あっという間に時間が過ぎてしまう。

「昼網」の新鮮な魚を買って帰ろう

「青空市場」の人気の秘密は、何と言っても魚のイキの良さだ。朝、佐野漁港から漁に出た船は、お昼を過ぎると多くの魚介を積んで港に戻って来る。そして午後2時を回ると市場の隣にある「競り場」で競りにかけられ、仲買人によって競り落とされた魚介がすぐさま「青空市場」の店先に並ぶのである。

お昼を過ぎると市場内には少しずつ買い物客が増え始める。みんなそれぞれのお店の下見をしているようだ。そして「昼網」の魚介が競り場から各鮮魚店に運ばれると、店先には所狭しとそれらが並べられて行く。

水槽の中で暴れるタイやアナゴ、台の上で元気に動くタコやワタリガニ、キラキラと美しい銀色の魚体を輝かせているアジや太刀魚…。そしてお店の人の売り声が市場の中にいっせいに響き始める。

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「獲れたてのアジ買うて行ってやー」「今日はスズキが安いでー」「ワタリガニ、今がいちばんおいしいでー」

そんな声に引き寄せられるかのように、どのお店の前も買い物客で埋めつくされていく。お店の人は買い物客の注文に耳を傾けながらテンポよく魚をビニール袋へと移し、次から次へとお客さんに渡していく。

お目当ての買い物を終えた人たちは、魚の入った袋やクーラーバッグを両手いっぱいに提げ、その手元を満足げに眺めながら、うれしそうな笑顔で市場を後にしていった。

そんな人たちの姿を見ていると、その昔、港の路上で市場が行われていた頃と変わらない、心まで豊かにしてくれる食文化が現在もここに息づいていることをうれしく感じずにはいられない。

行列が絶えない、人気のお寿司屋さん

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「青空市場」には、10年前にオープンして以来、市場を訪れる人たちに愛され続けているお寿司屋がある。それは市場の1階構内にお店を構える「裕太朗寿し」だ。アナゴやタコ、ハモ、タイなど、漁港から揚がった獲れたての地魚がおいしく食べられると、お昼時には店に入るのを待つ人たちの行列が絶えないほどの人気である。

この「裕太朗寿し」を、青空市場の会長でもあるオーナーから任されているのは轟貫一(とどろき かんいち)さん。ここで働き始めてわずか4年でその腕を認められ、23歳という若さでお店の采配をふるっている。

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 “うちの店には、オーナーが直接漁港で競り落とした魚が毎日届きます。素材が本当にいいので、調理していてもやりがいがありますね。それに自分が満足できないネタは絶対に使えません。うちの店がそんなことをしたら、この市場はもちろん、漁港の信用さえ落としてしまうことになりますから。”

鮮度抜群のネタを生かした握りや巻き寿司をはじめ、ご飯よりもネタの量が圧倒的に多いと評判の丼は、なんと10種類以上。地アナゴの天ぷら丼やさまざまな魚介をちりばめた大漁海鮮丼、夏場には、たっぷりのシラスの釜揚げが盛られたシラス丼などがずらりとメニューに並ぶ。

大阪湾の旬の魚介に舌鼓

この日はとことん旬の地魚にこだわって、ハモの湯引き・タタキの盛り合わせ(650円)、ハモの天ぷら(600円)、ハモの握り(400円)を注文した。

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どの料理もハモならではの淡白な旨みが、それぞれの調理法の中に上手に引き出されている。ハモの天ぷらは、身の上にたっぷりのきざみねぎと醤油をかけていただいた。これは泉州独特の食べ方だということで、ふわふわに揚げられたハモの身に醤油の香ばしさが相まって、箸が止まらないほどのおいしさだ。

泉州自慢の泉だこの握り(300円)も見逃せない一品。こちらは明石のタコとは違い、しっとりと柔らかな身が持ち味で、噛み締めると優しい甘みが口の中に広がっていく。ハモとタコ。夏らしい、さっぱりと滋味にあふれたおいしさに大満足の昼食となった。

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 “青空市場はどのお店も値段が良心的だし、市場ならではの、お店の人とのふれあいも楽しんでもらえるはずです。この市場のことをもっとたくさんの人に知ってもらって、どんどん気軽に遊びに来てもらいたいですね。”

おいしい魚を食べたくなったら、「青空市場」にぜひ足を運んでみてはいかがだろう。大阪湾の魚の豊かさ、昔ながらの浜の市場の風景に出会えば、きっとこれまで以上に魚のことが好きになってしまうはずである。

<プロの仕事の…佐野漁港の記事プロの仕事の…>

sano

泉佐野漁協青空市場

大阪府泉佐野市2丁目5187番101
最寄り駅:南海本線 泉佐野駅より徒歩約15分
[営業時間]10:00〜18:00 [定休日]水曜日
TEL :072-469-2340
URL:www.aozora-ichiba.com/

裕太朗寿し

大阪府泉佐野市2丁目5187番101
最寄り駅:南海本線 泉佐野駅より徒歩約15分
[営業時間]月・火・木・金/11:00〜19:00 土・日・祝日/ 10:00〜19:00
[定休日]水曜日
TEL :072-460-1313