SUI

南海沿線にある漁港および周辺地域の魅力を伝えるウェブマガジン

尾崎の魚介類の
商品ブランド化を目指す!

2016.05.11

最寄り駅:南海本線 尾崎駅

_B9A0465

大阪の一番南の市、阪南市には、尾崎港、西鳥取漁港、下荘漁港という3つの漁港がある。いずれも、昔ながらののどかな雰囲気がただよう小さな港だ。そのうち今回は、南海本線・尾崎駅から歩いてすぐのところにある尾崎港を訪ね、独自の取り組みについてのお話を伺った。

種類豊富な魚がたくさん獲れる小さな漁港

約束より少し早めに到着し海沿いをのんびりと散歩していると、猫が気持ちよさそうに日向ぼっこをしている光景に出会った。小さな港町ならではの、ゆっくりとした時間の流れに心地よさを感じながらぼんやりしていると、沖のほうから1隻の漁船が帰って来た。その船の上から颯爽と登場したのが、今回お話をお伺いする、尾崎漁協・組合長の佐藤保(さとうたもつ)さん(59歳)だ。

_B9A0450

“よう来てくれたなぁ。今日は海苔の漁に出とってなぁ。尾崎は小さな港やけど、この辺は美味しい魚がようさん獲れるから、もっとみなさんに知ってもらえればええんやけどなぁ。”

と佐藤組合長。ここ、尾崎の地で代々漁業を営み、自身も漁師歴40年以上というベテランだ。気取らないざっくばらんな人柄が魅力で、地元の漁師たちを束ねている。尾崎では、一年を通して多く水揚げされるアカシタビラメやタコ、ワタリガニなどを始め、春から初夏にかけてのこの時期には、シャコやハモ、サワラ、アジなど、種類豊富な美味しい魚がたくさん獲れる。

地元・尾崎の魚をブランド化

規模が小さいからこそ、生き残りをかけて、新しい取組みにも臆せずチャレンジする尾崎漁協。その代表的な取り組みとして、「尾崎で獲れる美味しい魚をもっと全国に広めたい」という想いから、地元漁師はもちろん加工業者とも力を合わせ、尾崎産の魚のブランディングに尽力している。独自商品をブランド化し、6次化商品として販売し、広めていこうという活動だ。

1つ目は、尾崎漁協が主体となって商品化している「浜ゆでシャコ」。シャコといえば、昔はおやつとしても頻繁に食卓に並ぶほど、大阪で大量に水揚げされ、多くの人に親しまれてきた。

image-3※1

しかし最近では漁獲量が徐々に減少し、扱うスーパーも限られていることから、食べたことがない若い人たちも増えているのだという。そんなシャコの美味しさを知ってもらおうと、尾崎港に水揚げされたシャコを活きたまま、浜で釜茹でし、冷凍保存した商品が尾崎の「浜ゆでシャコ」だ。自然解凍した際に、新鮮さが蘇ってぷりっぷりのシャコの旨味を味わうことができる。

続いて、「尾崎のサワラ」のブランド化にも力を入れている。水揚げ後は沖で素早く血抜き・神経締めして下処理をする。そして、細菌増殖抑制効果のある水を使った氷で新鮮に保ちながら、生のまま出荷する。大阪湾のエサを食べて育ち、たっぷりと脂がのったサワラを「尾崎のサワラ」として、今後さらに広くPRしていきたいと話してくれた。

ほかにも、一年を通して水揚げされるアカシタは、地元でさまざまに工夫して食されてきたと佐藤組合長は話してくれた。そのうち代表的な食べ方が、「尾崎干し」とも言われる伝統的な「アカシタの一夜干し」だ。浜風にさらしてカラカラになるまで乾燥させ、木槌でたたいて骨を砕く。それを軽くあぶって、砂糖醤油に付けて食べれば絶品なのだとか。

image※2

さらには、以前の記事でも紹介した地元の水産メーカーが最新機器を用いて丁寧に骨切りを施した「ハモの一夜干し」など多彩なハモの加工品や、同漁協のノリ養殖業者が製造する「生海苔煮」、飲食店が考案・提供する「穴子の骨せんべい」など、地元の企業や飲食店とも協力しながら、今後も特産品の開発を継続して行っていく予定だ。

環境に配慮した取組みを通して、地域との関わりを

このように、尾崎の魚を多くの人に知ってもらうため、あらゆる取組みを行っている尾崎漁協。さらに13年前、佐藤さんが組合長になって早々に着目したのが環境面の改善だった。

“当時、尾崎港に流れ込む水は黒く濁っとってな。ヘドロ混じりの悪臭で住民は寄り付かんかったんよ。けどそれやと、せっかくの美味しい尾崎の魚のイメージダウンにもつながってしまう。住民の人たちに、漁港をもっと身近に感じてほしい!そう思って、いろんな人から話聞いて導入したのがEM菌やったんよ。”

_B9A0486

EM菌は、環境浄化作用をもつ微生物を集めた、いわば自然界の善玉菌。尾崎港に流れ込む清水川へEM活性液を放流することで、長年悩まされてきた川のヘドロや悪臭の減少に貢献したのだという。

確かに、取材時に尾崎港を訪れた際も、漁港独特の臭いなどは全くなく、水も澄んでいることに驚いた。

さらに、地元の飲食店や団地、スーパーなどに協力してもらい数年前に始めたのは、回収した廃油をバイオディーゼル燃料として使用するエコ活動だ。漁船の燃料使用時の二酸化炭素排出量を削減するなど、さまざまな角度からの環境配慮も行っている。漁協内に留まらず、必要とあらば地元のいろんな人達を巻き込みながら、「尾崎の美味しい魚を広めるために何ができるのか」ということを常に模索し続ける佐藤組合長の行動力には感服する。

_MG_0341

今回、実際に尾崎漁協を訪れてみることで、その取り組みや活動を支える人々の思いに触れることができた。水揚げされた魚介や競りの様子などを、目で見るだけでなく、五感で感じることで、その土地や郷土料理に改めて愛着というものが湧いてくる。あちこちで「食育」の大切さが叫ばれている昨今、「自然の恵みをいただくことの有難さ」という基本に立ち返らせてもらえる貴重な取材となった。

阪南市にある漁協はいずれも小規模で、一つひとつの漁港にはなかなかスポットが当たりにくいのも事実。だが、漁師町に足を運んでみると、地元の鮮魚店やスーパーでは、地元で獲れたばかりの新鮮な魚を購入することができる。みなさんにも機会があれば、阪南市の漁港をのんびりと巡りながら、大阪産の魚の美味しさにぜひ触れてもらいたいと思う。

※1-2 〈写真提供〉尾崎漁業協同組合

<陽春を告げる… 尾崎港の記事|       

ozaki

尾崎漁業協同組合

大阪府阪南市尾崎町3-27-14
最寄り駅:南海本線 尾崎駅より徒歩約5分
[受付時間]平日/9:00〜12:00、13:00〜17:00
土曜日/9:00〜12:00
[定休日]毎週日曜日、祝日は不定休
TEL :072-472-0137
URL : http://www.ozakigyokyou.jp/