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南海沿線にある漁港および周辺地域の魅力を伝えるウェブマガジン

漁師を支えて港で働く
女性たちの奮闘

2016.03.02

最寄り駅:南海本線 箱作駅

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(→前編はこちら)

下荘漁協の漁師たちが漁に出かけるのは、漁法によって違いがあるものの、だいたいが朝の5時頃。
では、漁師の奥さんの1日は、どんな風に始まるのだろう?

一日の始まりは夜明け前から

船越さん 朝3時半ぐらいに起きて、お弁当を作るでしょ。それから港に行って、漁で使う氷を船の冷凍庫に入れたり、出航の準備を手伝います。
一旦船を見送ったら、家に帰って掃除や洗濯。その後、また港に戻って、2時半から始まる競り用に魚を入れるカゴを準備したりね。”

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西澤さん 港での仕事が終わった後は、すぐ家に帰って夕食の支度と明日のお弁当の準備。夕食は5時ぐらいには済ませなあかんしね。それで寝るのは9時か10時頃かな。”

家と漁港を何度も往復しながら、あっという間に過ぎて行く1日。子供が自立するまでは、食事の支度など、ご主人と子供たち両方の生活時間に合わさなくてはならず、とても大変だったそうだ。

しかし、早朝からきびきびと働き、毎日を規則正しく過ごしているからだろうか?実際の年齢にはまるで見えない4人の若々しさには本当に驚かされてしまう。

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ちなみに4人はとても仲良しで、一緒にランチに出かけることもよくあるそう。忙しい時間の合間に女同士で楽しくおしゃべりをすることは、慌ただしい日々の中で、何よりほっとするひとときなのである。

気苦労が絶えない漁の仕事

沖に出ると周囲は深い海。ましてや狭い船上で作業を行う漁の仕事は、常に危険と背中合わせだ。それだけに、事故やご主人の怪我の心配など気苦労が絶えないと4人は言う。

大津さん うちの主人なんか、船の甲板で滑ったりして、何回か骨折して帰って来てるからね。オコゼやエイに刺されて怪我をすることもあるし。”

 

西澤さん 網を揚げるときのウインチとかワイヤーも、ちょっとでも油断したら大きな怪我の原因になるしね。1人で漁に出かけた時は、何かあっても、機械を止めたり、助けてくれる人がおらへんから、特に心配やわ。”

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また、漁師の仕事は、毎月一定の収入があるわけではない。冬はシケが多いため、漁に出る日は限られる。夏は海が穏やかで漁にはたくさん出られるものの、獲れる魚の量がとても少ないのだという。
そんな中で、家計をやりくりしているのも彼女たちだ。

船越さん 私らもパートとかに出れたらいいんやけど、漁の手伝いがあるから無理やしねぇ。
ただ、夏場は漁協が隣のビーチで潮干狩りを運営してて、そこの手伝いも私らの仕事なんです。漁が一番あかん時期に働けるから、それはほんまに助かってるね。”

 

米原さん でも、サラリーマンやったら、今頃、退職金とか厚生年金とか貰えてるやろうになぁ(笑)。やっぱり漁師の家は大変やわ。”

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口々にそう話す彼女たちだが、その表情はとにかく明るい。海の男たちは、奥さんが毎日陽気に送り出してくれるからこそ、さまざまな不安を払いながら沖へと船を出すことができるのではないだろうか。

漁師の妻として、母として

下荘漁協は若い世代の漁師も多く、20代〜30代の漁師が、組合全体のおよそ4割を占めている。そして、彼女たち4人の息子さんも、それぞれ父親の後を継ぎ漁師の仕事を選んだ。

船越さん うちの息子は大学に進学したんやけど、その頃、おじいちゃんが高齢で漁に出れなくなってきてね。そういう家の事情を見ていて、息子なりにいろいろと考えるところがあったんやろうね。大学を卒業する時に「漁師の跡を継ぐわ。」と言ってくれたんです。”

しかし、漁の仕事の大変さを、身を持って感じている彼女たちにとって、息子たちのお嫁さんにまで漁の手伝いをさせることには抵抗があるという。

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大津さん 今は獲れる魚も少ないでしょ。せやから息子のお嫁さんになってくれる人には、漁を手伝うよりも、パートとかに出て働いてもらった方がいいと思ってるねん。息子の仕事も、私らが働けるうちは手伝えばいいことやからね。”

 

西澤さん 潮干狩りの仕事は、これから次の代に引き継いでもらわなあかんねんけど。まぁ、私らが杖をついてでも頑張って、あかんようになったらお嫁さんに交代してもらおかな、と思ってるねん。”

どこまでも逞しい漁師の奥さんたち。頭が下がるような働きぶりや家族に対する愛情など、本人たちから改めて話を聞くほどに、その存在の大きさや、夫婦が二人三脚で助け合ってこそ漁業が成り立っていることがよく分かる。

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彼女たちの思いとは裏腹に、これから漁港で働きたいという女性が現れても、決して不思議なことではないと思う。
強く優しく、家族を支えながら生きる漁師の奥さんの姿は、それほどまでに格好良いのである。

<下荘漁港発 漁… 下荘魚港の記事大阪の海で守…>

shimosho

下荘漁業協同組合

大阪府阪南市箱作3341
最寄り駅:南海本線 箱作駅より徒歩約10分
TEL : 072-476-0473
072-476-3319(潮干狩り・海水浴期間中)
[受付時間]9:00〜17:00(月〜金曜日)
http://www.geocities.jp/pitipiti_siohigari/hp2/top.html