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南海沿線にある漁港および周辺地域の魅力を伝えるウェブマガジン

鱧(ハモ)のブランド化で
地元漁業を盛り上げたい(前編)

2016.01.27

最寄り駅:南海本線 尾崎駅

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[株式会社のぞみ 代表取締役 國岡貞夫さん]

阪南市北部にある尾崎港。どことなく昭和の懐かしさが漂うそんな海沿いを南西へと歩いて15分ほど、潮風香る港町に自社の水産加工センターを構えるのが、今回お話を伺った「株式会社のぞみ」。夏はハモ、冬はフグを看板商品とした水産加工業を営んでいる会社だ。

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代表取締役の國岡貞夫(くにおかさだお)さん(61歳)は、この尾崎の町で生まれ育ったのではなく、もともと大阪市内の出身なのだそう。前職の勤務先も大阪市内にある中央卸売市場で、大卸の会社で約35年間にわたり活躍した、いわば業界のエキスパートである。

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ところが紆余曲折あって勤めていた会社は倒産。それから第二の人生を模索している時期に、縁あって尾崎漁業協同組合の現組合長である佐藤保(さとうたもつ)さんと出会った。佐藤組合長から「尾崎に来えへんか?」と誘われたこともあって、平成22年にこの町で起業することになったのだ。

主力商品のハモは丁寧な骨切りが命

「株式会社のぞみ」の加工場には、なにやら職人顔負けのハモの骨切りの機械があるらしい。そんな噂を聞きつけて早速訪ねてみた。

 現地へ到着すると、國岡社長は広々とした加工場の奥から出迎えてくれた。そして挨拶を交わしたのちに案内された小部屋では、白衣に帽子、マスク姿の従業員たちが一斉に、手際良く魚をさばいている。あれよあれよと言う間に内臓と骨が取り除かれ、次々と積み上げられていく魚の山にしばし見とれてしまった。

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「これはノドグロですわ。うちはハモとフグが主力商品ですけど、需要があれば魚介やったら何でも扱うさかい。あ、写真撮りたいと言うてくれてはったハモの骨を切る機械はこれですわ。」

國岡社長はそう言って、その作業部屋の一角にある機械を指差した。

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ハモはウナギ目に分類される魚だ。ご存知の通り、ウナギやアナゴ同様に小骨がとても多く、しっかりとした骨切りを施さない限り、とてもじゃないが美味しく食べられない。口の中に入れたときに、小骨が舌や歯にあたる嫌な食感をなくすためには、熟練の職人による十分な骨切りが必要とされる。料亭などではまだまだ手作業のところも多いが、大変な手間を必要とするため、効率化を重視する加工業者などでは近年、機械による骨切りも一般化してきているとのこと。

「株式会社のぞみ」でも、創業時より機械を導入してハモの骨切りを行っていたが、数年前、さらに高性能な最新機を導入することにした。「ちょっとでも骨が残ってたら即クレームになるさかいな」と國岡社長が言うように、ハモの加工において、骨切りというのは何より重要な作業だ。最新機は少々値が張ってしまったのだが、「より美味しいもの、品質の良いものを提供したい」という國岡社長の思いを実現するための大切な初期投資であった。

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私が初めて目にする機械を興味津々に眺めていると、従業員の方がさっそくハモをセットし、機械を動かしてみせてくれた。トントントンという小気味良いリズムに聴き惚れているうちに、おおよそ2分ほどで長さが60センチもあるハモの骨切りがスムーズに完了。見事に皮1枚のみを残し、キレイに等間隔でカットされたハモが機械から出てきた。「わー!すごーい!」と、その仕上がりの質の高さに思わず歓声を上げ、自然と拍手をしてしまうほどだった。

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機械の原理は、ハモに対して垂直になるように取り付けられた刃が上下しながら骨をカットする、という至ってシンプルなものだが、これがなかなかの優れモノなのだという。「新型のハモ切り機はこの刃が決め手なんですわ」と刃を手に持って見せてくれた國岡社長。というのも、旧型の機械では、2つの円形の刃が回転しながらハモをカットしていたため、刃がどうしても身の端まで届きにくいという欠点があったそう。いっぽう、新型機に設置される長方形の刃は、職人が使う骨切包丁と同じように身の端まで均等に刃が行き渡るため、切り残しがまったくない。

 まさに職人の包丁技と同じ品質の仕上がりになるいうことですわ。せやから、この刃を見せてもろた瞬間、即購入を決めましたね。正直めちゃくちゃ高かったんやけどね。ボタン一つで、カットする感覚をミリ単位で変更できますし、職人レベルの技を、何匹分でも機械が正確にやってくれるわけですから。ある意味、職人より上ですわな。

加工場では、漁師さんから毎日15時~16時に届く魚を活け締めにする。まだピチピチと動いているものを加工し、翌日にはお客さんの手元に届くため鮮度抜群。さらに、近所のスーパーには活け締めしたその日のものが並べられるというから、魚好きには何ともうらやましい限りだ。

(→後編に続く)

<港の風景に溶… 尾崎港の記事鱧(ハモ)の…>

ozaki

株式会社のぞみ

大阪府阪南市尾崎町1-44-1
最寄り駅:南海本線 尾崎駅より徒歩約15分
[営業時間]10:00〜17:00
[休業日]日曜日・祝日の前日
TEL :072-447-7724
https://nozomi-suisan.jp/