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南海沿線にある漁港および周辺地域の魅力を伝えるウェブマガジン

岡田漁港で希少な
国産ワカメの養殖を体験!(後編)

2015.12.22

最寄り駅:南海本線 岡田浦駅

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(→前編はこちら)

いざワカメの養殖を体験!

いよいよワカメの種糸の挟み込みを体験してみた。参加者はまず2人ひと組みのペアになり、1人が両手で握った親縄をねじり、ゆるんだ縄と縄との隙間に、もう1人が素早く種糸を差し込んでいく。
ワカメの幼葉は乾燥すると死んでしまうため、常に水に濡らすこと、またヘドロがつくと、光合成ができず芽が成長しないため、ロープに差し込む前には付着した汚れをきれいに洗っておくことも大切なポイントだ。

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種糸を埋め込む親縄は1本50〜60mもあり、約60〜70cmの間隔で種糸を埋め込んでいく。ということは、種糸の数は100以上。「挟み込み法」はとてもシンプルだが、こうした地道な作業を何度も繰り返す上に、何百本と親縄を張るため、この時期のひとつの大仕事となる。

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自然条件に左右されるワカメ養殖

種付けの後、ワカメは「沖出し」といって、岸から50mほど離れた沖に親縄が設置される。ワカメは数ヶ月の間に、海の中の栄養分を吸収して大きくなり、お正月開けから始まる収穫を待つ。収穫したワカメの約半分は生のまま、漁師たちが直接大阪市内の市場に卸すという。残りの半分は保存が効くようにさっと熱湯にくぐらせ、塩をまぶした塩蔵わかめに加工し、岡田漁協を通じて出荷される。

初心者にも比較的手を付けやすいワカメの養殖だが、最も難しいのは収穫のタイミングを見極めることだ。

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年明け後に行われる一番刈りのワカメは柔らかく、市場では最も高値で1キロ250円前後で取引されるそうだ。一番刈りのワカメは、まだ葉も薄く茎も細い。つまり、1本のロープから獲れる量(重さ)はまだまだ少なく、たった100キロほど。
2月、3月と暖かくなるにつれワカメはぐんぐん成長して1本のロープから獲れる量は増える。しかし、一番刈りのワカメより、価格が下がってしまうという。

近年は温暖化の影響もあり、長年、海を知る漁師たちでさえ気候や水温といった外的要因は予測しきれない。岡田浦漁業協同組合の出口さんがその見極めの難しさを教えてくれた。

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出口さん 2月になって、ぬくい風が吹いてくるとね、急にワカメが大きなるんです。その年によって、年明けの気温の上昇具合が全然違うからね。年明けからどんどん刈りすぎるとワカメがまだ長く伸びていない分、収穫量が少ないから儲けも少ない。逆にまだ置いておこうか、とゆったり収穫してたら海の水温が上がってきて、どんどん伸びてしまうから収穫も加工もおっつかへん。1日でも海に置いてたら、何センチっていうくらい伸びるからね。ワカメの養殖は自然任せっちゅうか、半分は運やね。毎年3月の終わりは、予想が外れて、まだいっぱい海にワカメが残ってるぞ、収穫追いつけへん、て言うて嘆いてるんや。”

そう言って、出口さんは苦笑いをした。2月になり吹いてくる暖かい風は海に春を呼び込む。その一方では、穏やかな海の上で、漁師たちは刻一刻とワカメと格闘しているのだ。

海の恩恵をもっと知ろう

こうした漁師たちの日々のドラマも、身近にある海の豊かな恵みも消費者には知られていない。「大阪から明るい水産業を創る会」の白川光弘さんはそんなもどかしさをきっかけに、海と陸をつなぐ活動を始めたそうだ。

白川さん 今から4年前に大阪湾の豊かな海の幸の魅力を知った僕は、おそらく漁師さんたちも高齢化しているなどの問題があるのではと思い、その実態を知りに行くという目的で、ふらりと岡田漁港にやって来ました。まず漁協に電話して、当時青年部におられた出口さんを紹介してもらい、漁の従事者の現状や組合のことなどをヒアリングしたらワカメの養殖もやっているとわかったんです。そこで、これも大阪湾の魅力のひとつ。ワカメの養殖についても、もっと多くの人に知ってもらいたいし、もっと多くの人に関わって欲しいと考え、僕らにできることありませんか?という話から、体験イベントとしてやらせてもらえることになったんです。”

白川さんはこうして昨年から養殖とワカメの収穫体験をイベントとして主催しているほか、消費者が食品についてもっと関心を持つために、漁業や農業などの第一次産業について知る勉強会を定期的に大阪市内で開催している。

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白川さん 大阪は海が目の前にあって、山もすぐそばにあって、農産物や水産物にすごく恵まれてる場所。それなのに、まだまだ大阪府民は地元の魚に意識が向いていない。だから、スーパーに行って、100円のアジと200円のアジと、違いがわからなかったら、深いことを考えずに安い方を選んでしまう。でも食べ物の100円や200円の差は流通のコストなど、意外と大事な問題が隠されていたりするんですよね。食べ物はやがて自分の身になるもの。だからこそ、一般の人にも、もっと興味を持って欲しいんです。”

ひとつひとつ親縄に埋め込まれた小さなワカメは、数ヶ月後にどれほどの長さに成長しているのか。どうやって収穫し、私たちの食卓に並ぶのか。養殖のはじめの一歩を体験した今や、その続きの物語がとても気になってきた。聞くところによると、白川さんは3月13日にワカメの収穫体験も企画しているそうだ。また、機会を見つけて参加をしてみたい。

〈写真提供〉※1 大阪から明るい水産業を創る会

<岡田漁港で希… 岡田漁港の記事堺に今も残る…>

 

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大阪から明るい水産業を創る会

https://www.facebook.com/明るい水産業を創る会-326846617448377/
[お問い合わせ先]wakame02@gmail.com

岡田浦漁業協同組合

大阪府泉南市岡田りんくう南浜
最寄り駅:南海本線 岡田浦駅より徒歩約10分
[受付時間]9:00〜17:00 [定休日]水曜日・日曜日
TEL :072-484-2121
URL : http://okadaura.org